お知らせ

【手の麻痺】生活上で使うことを優先するワケ

2022.07.01

こんにちは!理学療法士の長尾です。

先日、上肢の麻痺についてお悩みの方を担当させていただく機会がありました。

「病院に入院している時は、手のリハビリが少なかったです。」

「最近ピクっと手が動くような気がしてきたけど、生活は変わらないです。」

上記のような思いを抱きながら、体験利用を希望される方が多い印象があります。

特に入院中には、”退院すること”に重きを置かれることが多いと思います。

「手」のことよりも「移動手段」など基本動作に直結する部分を強化してリハビリせざるを得ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は先日、「麻痺した手をもっと動かせるようになってほしい!」というご希望の方の事例紹介をHPに掲載開始しました。

さて今回は、テーマの「麻痺した手に関して、生活上で使うことを優先するワケ」について、生活面に重きを置いている理由をお伝えできればと思います。

まず、当施設では初回ご利用時に「ご希望・ご要望:どのようになりたいか?」を用紙に記載していただいております。

その中で麻痺した手を「動かせるようになりたい」というお悩みが多いように思います。

「手を動かす」上で大事にしていることをいくつかご紹介します。

何のために「手」を動かしますか?

 上肢というのは、役割が非常に多くあります。

「動かす」ということに限っては、以下のようなものが挙げられます。

  • 手を伸ばす(例:頭上の物を取る)
  • 手で握る(例:買い物袋を持って運ぶ)
  • 手で掴む(例:ペットボトルを掴んで飲む)
  • 手で支える(例:字を書くときに押さえる)
  • 指でつまむ(例:洗濯バサミを開閉する)
  • 手を添える(例:茶碗を持って食べる)

例に示したような普段自然と行っていた動作の遂行には「手」のあらゆる機能が求められています。

手の機能改善には、今後の生活環境や役割によって目指すべき方向性が変わってきます。

また、手を動かせるようになった先の具体的な生活状況などは個人で大きく異なります。

そのため、細かく確認していきながら、予後予測および適切なアプローチ方法の選択を双方で検討していくことになります。

脳梗塞後、上肢活動の特徴について

特徴としては、以下が挙げられます。

■最大限の努力で何とか動かそうとしてしまう

■動く・動かすという点に意識を向けすぎてしまう

■手に入る感覚が不十分になってしまう

■不十分な分を補おうとするあまり、過剰な運動が生じてしまう

必死に動かそうとするあまりに全身に力が入ってしまうケースをよく見かけます。これらは全て繋がっていることが多く、悪循環に陥りやすいと言われています。この悪循環の中に記載されている「感覚」が肝になります。

適切な運動を行うためには、「動かす」ということだけでなく、「感じること」も非常に重要ということです。

前述した手の役割は「動かす」という点だけを紹介しましたが、手には「感じる」という役割の方が重要とも言えます。

例えば、生卵を握った時に強く握ってしまうと割れてしまいますよね?

柔らかく包み込むような手の形をつくるには、「強く触れると割れる」という情報が大事になってきます(生卵に関しては、これまでの経験から目で見て判断しているのですが、それも“目で見る”という感覚情報になります)。

握った時・押した時などに感じる「硬い・柔らかい」「軽い・重たい」などのような感覚がなければ、適切な手の運動は難しくなります。

普段の生活の中でどれだけ感覚入力が促せているか、という点からも生活上での使用機会は必ず確認しています。

・マッサージを入念にされている

・茶碗は持てないけど、テーブルの上に手を置いている

・左手でドアノブを握って、開けている

などなど普段の生活内で左手への関与が大事になってきます。

「どのように動かすか」というよりも「生活内でどのように使用していく(=感覚を入れていく)か」という点の優先度を高く設定して、情報収集・アプローチしております。

手は意識しないと使わない?

 上肢と下肢で異なる点に、“力が自然と無意識に入ってくれるか、そうでないか”という点があります。

私たちは、地球上に住んでいると共通して存在する「重力」の影響を受けて日々生活をしています。

「立つ」「立っている」「歩く」などの動作や姿勢保持には、この重力の影響を受けて勝手に力が入っています。

しかし、「手を使う」ということはそうにもいきません。細かな操作などが必要になってくるからこそ、生活内では手を使う目的が明確なのです。

下肢と違って、勝手に力が入ってくれるということは期待できないため、知らず知らずのうちに使用機会が低下しているケースはあります。生活内での左手の関わり・役割、これが改めて重要になってきます。

以上のことからも、適切に手を動かすためには普段の生活内での使用頻度・使用方法が大切となります。

実際に当施設で何ができるか、という点については過去にブログ内で紹介しておりますので、合わせてご確認いただければと思います。

麻痺した手のことでお悩みの方はぜひとも体験プログラムのご利用を!