こんにちは!
梅雨の天気から一転、各地で猛暑を記録しておりますね・・・。
熱中症にはくれぐれも注意してお過ごしください!
本日のテーマも“職場復帰”についてPart3となります。
前回までのおさらい
年齢 | 50歳代 |
性別 | 女性 |
職業 | 保育士 |
疾患・症状 | 右視床出血(左片麻痺) |
退院直後の生活状況 | ・屋内移動伝い歩き自立 ・屋外多点杖歩行見守り(合計200〜300mほど可能も時間が掛かる) ・屋外用に電動車椅子もレンタル済み ・入浴はヘルパーさんの見守り ・炊事などもヘルパーさんに協力依頼していた |
退院直後のリハビリ状況 | 訪問でのリハビリ(週3回) |
主訴 | 絶対、今年中に保育士に復帰する! そのためにも家を出て、1人でも外出できるようになる! |
前回は、上図の「復職までの流れとして整理したポイント」の(2)まで述べさせていただきましたので、本日はその続きとなります。
(3) どのような手段で職場へ通勤するか
本症例の復職・外出に向けた関わり合いの中で最終的には「歩行」以外の選択肢(=電動車椅子)を用意できたとPart.1でもご説明しました。
まずは、そこに至った背景や過程を説明します。
通勤手段は、住まいの地域やその地域の公共交通機関によって変化する要素です。
本症例の場合、元々保育園まで電車で通勤されていました。
そのため、介入当初より本人様は駅までの移動を見据えて、積極的な屋外歩行練習を実施されており、合計距離だけで考えると駅の近くまでは歩行することは可能な状態でした。
しかし、①見守りが必要な点、②時間を要する点からも移動に伴う危険性やそれを続けることによる身体への影響を考慮して「安全面」という側面から毎日の通勤には適していないと判断しました。
その結果、「電動車椅子」+「公共バス」を利用して通勤する方向性となりました。
上記のような背景があり、当ブログのPart.1で紹介した自宅内の玄関環境を片側手すりのみの設置にし、ステップ台は簡易的な市販の木の台を利用することになりました(写真1)。
そこで通勤に向けてリハビリでは、
①「電動車椅子」を安全に出し入れできること
②「電動車椅子」に乗って、安全にバス停まで操作できること
といった2点を目標に掲げ、方法論含めて検討を進めていきました。
① 電動車椅子の出し入れについて
まずは、車椅子に乗車しながら出し入れが可能か検討しました。
しかし、玄関スペースの問題やスロープ設置が必要な段差があるなどの環境的な面より、
“何とか出られたとしても入れないときがある” =「一貫性がないため、不安定」
“スロープを設置していても斜度が強く感じて怖い” =「安全性の欠如」
といった問題が挙がり、乗車しながらの出入りは困難と判断しました。
方法論に頭を悩ませていたところ、電動車椅子の介助者用の操作パネルが目に入りました(写真2)。
本症例のレンタルしていた電動車椅子には、介助者用の操作パネルが付いているタイプだったこともあり、本来の使用方法とは異なりますが、「これで操作できる!」と感じました。
実際の電動車椅子の出し入れ方法は、以下ようになります(図1〜2)。
上記方法を安全に遂行するためには、
- 手を対象物に伸ばすなどのような動的な立位姿勢
- 後ろ向きに歩く・段差を跨ぐ動作
といった姿勢・動作獲得に向けてリハビリを進めていき、特に後ろ歩きは経験したことのない動作であったため、ステップ課題や方向転換などから練習を開始しました。
最終的には両者とも獲得でき、安全な外出手段として確立しました!
② 電動車椅子の操作について
こちらはバス停までのルート確認を行い、
- 不整地や傾斜、段差の有無などをチェック
- 車や人通りなどの混雑状況のチェック
を行った上で、電動車椅子操作が安全に可能か実践を繰り返しながら、安全性を評価していきました。
以上、通勤手段の決定に至った背景やリハビリ展開の流れをご説明しました。
現在もこの方法で転倒なく、安全に電動車椅子の出し入れができております。このことからも、本症例の利用者様にとっては、最適な方法だったと言えるのではないでしょうか。
方法は1つではありません。人それぞれの手段があります。
通勤の問題で復職を諦めかけている方へ、何かの参考になれば幸いでございます。
ご相談も受け付けておりますので、ぜひ体験プログラムを有効活用していただければと思います。
Part.4へ続きます。
理学療法士 長尾 侑治