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事例紹介 脳出血後の職場復帰への道のり Part.2

2021.07.15

こんにちは!
近畿地方は梅雨明けが近づいており、いよいよ夏の到来ですね。

本日のテーマは、前回に引き続き、“職場復帰”についてです。

前回までのおさらい

年齢50歳代
性別女性
職業保育士
疾患・症状右視床出血(左片麻痺)
退院直後の生活状況・屋内移動伝い歩き自立
・屋外多点杖歩行見守り(合計200〜300mほど可能も時間が掛かる)
・屋外用に電動車椅子もレンタル済み
・入浴はヘルパーさんの見守り
・炊事などもヘルパーさんに協力依頼していた
退院直後のリハビリ状況訪問でのリハビリ(週3回)
主訴絶対、今年中に保育士に復帰する!
そのためにも家を出て、1人でも外出できるようになる!

前回は、上図の「復職までの流れとして整理したポイント」の(1)まで述べさせていただきましたので、本日はその続きとなります。

(2) 職種は変更せずに復帰することは可能なのかどうか

まずは過去のデータを参考にして、どの程度の割合で復職を果たされ(職業状況)、どのような形で復職されたか(復職状況)を確認したいと思います。

2009年に報告された研究結果によりますと、発症後1年6ヶ月が経過した段階での復職状況は以下のようになっております。

① 職業状況(268例)

復職が126 例(47.0%)、復職から離職し再就職が7例(2.6%)、休職中が25例(9.3%)、無職が99例(36.9%)、復職後離職が11例(4.1%)であった。

② 復職状況(複数回答可)(210例)

原職復帰は86例(41.0%)、退職後新規就労10例(4.8%)、原職の配置転換15例(7.1%),就労断念67例(31.9%)、求職中11例(5.2%)、その他21例(10%)であった。1)
これらの数値からは、約半数程度が復職を果たしており、その中でも職種は変更せずに復帰された割合は全体の4割程度となっております。

本症例の場合、原職復帰となりますと「保育士」への復帰になります。本人様は原職復帰を強く希望されており、勤務していた保育所内のトイレまでの動線や段差、スロープの有無などあらゆる環境をしっかりと調査されておりました。しかし、それと同時に乳幼児と実際に接すること(抱っこするなど)を考えると、「難しいかもしれない」と葛藤されていました。

私自身は「保育士」としての役割を明確にする前に、大前提としての“職場まで安全に移動する”といった大きな課題解決に時間を要しておりました。

  • 復職までの期間が迫っていたこと
  • 介護保険領域のリハビリでは、“外出支援への時間”しか確保できなかったこと

上記のような理由もあり、「保育士」として希望を捨てないようなリハビリ介入ができていたかと問われると自信を持って答えることはできません。

今回のケースのように時間的な制約を強く受ける場合、選択肢の1つに「自費リハビリ」があれば・・・そのように今振り返ると思うことがあります。

  • 「保育士として何ができるか?」といった点を綿密に話すことが可能
  • 実際に乳幼児を想定したカバンなどで「抱っこ動作」を評価することが可能
  • それらの結果を、多職種に情報提供することができ、復職支援連携の強化が可能

といったように、より具体的に復職後のイメージを掴むための時間を確保することができ、本人様にとって最良の目標設定の立案に繋がっていきます。

本症例の場合、最終的には産業医や人事部との面談を重ねて「保育士」としての復帰を果たしました!

ですが、業務内容は事務関係のデスクワークへと変更となり、「原職の配置転換」といった結果になりました。
復職の難しいところは、身体状態や動作能力といったリハビリ的側面だけで解決する問題ではないという点です。雇用主側の柔軟な体制があるのかどうか、社会保障や周囲からのサポートの有無などあらゆる要素によって、復職の可能性は大きく変化します。
それでも冒頭での研究データをみると、「どのような形であれ、復職を果たしている人がいる」というのは紛れもない事実であります。その支援の1つの形として、弊社を確立していきたいという思いです。

Part.3へ続きます。

【引用文献】
1)豊永 敏宏:脳血管障害者における職場復帰可否の要因 ―Phase3(発症1年6カ月後)の結果から―.日本職業・災害医学会会誌. JJOMT Vol. 57, No.4:2009

理学療法士 長尾 侑治