お知らせ

介護負担感はリハビリで減る?【脳梗塞後遺症】

2023.11.17

こんにちは!


本日のテーマは介護負担についてです!


その背景として、

現在の脳梗塞リハビリRoomアイ・エスの利用者様は

「家族様から何らかの介助を要している状況」の方が

半数を越えており、家族様より下記のような

ご要望を受ける機会が多いからです。


  • 1人で歩けるようになってほしい
  • 夜中でも1人でトイレに行ってほしい
  • 安心して外出する時間がほしい

脳梗塞により麻痺した足を上げることができない

(着替えや入浴場面など)、

座った姿勢が不安定で支えが必要である、

など脳梗塞後遺症により

介護が必要になるケースは多く存在します。


上記のご要望に共通している背景は、

「介護負担(感)を下げてほしい」という点になります。


そのため、本日はリハビリと介護負担(感)の関係性や

当施設での関わりについてご説明します。

1.介護負担・介護負担感とは?

まず介護負担とは、アメリカの心理学者Zaritらが定義付けた概念であり、下記の通りです。

要介護者が主体となって介護する者が経験する「身体的」「心理的」「経済的」「社会的」な苦痛の程度

そして、介護負担と介護負担感はどちらも似たような用語ではありますが、意味合いは異なります。

  • 介護負担:客観的に観察できる負担状況

    (例)要介護者の介助量、金銭面での経済的負担など

  • 介護負担感:主介護者が感じる主観的な要素

    (例)身体的負担:「腰が痛い」/精神的疲労:「眠れない」など

2.リハビリとの関連性について

今回のブログタイトルである「リハビリを頑張れば、介護負担(感)も減るかどうか?」という点についてですが、

変わる可能性もあるが、そんな単一的な話ではない

というのが答えになります。

まず日常生活動作に問題がある方には、生活状況を点数付けするFIMやBIといった指標を用います。

入院中にもこちらの数字を基に現状や今後の方向性について説明された方が多いのではないでしょうか?

こちらは、一般的に点数が高ければ高いほど、日常生活が自立していると判断できます。

リハビリにて日常生活動作の改善が得られると上記した点数付けも同様に改善が得られることとなり、「介護負担」には客観的な変化が出ます。

しかしながら、介護負担感とリハビリ介入の効果は一定しておらず、介護負担と同様に必ずしも変化が出るとは限らないということがいくつか報告されています。

参 考:杉田 翔 他. 脳卒中者を持つ家族の介護負担感に対する リハビリテーション職による介入の効果: ランダム化比較試験のシステマティックレビュー.日本プライマリ・ケア連合学会誌.2019;42(1):15-25

そのため、介護負担感に焦点を絞った関わり合いが重要となります。

3.実事例と当施設での関わりについて

介護負担感は多くの因子から成り立つため、質問紙を用いてどのような部分に負担が掛かっているのか紐解いていく必要性があります。

冒頭でも説明したように「身体的」「心理的」「経済的」な負担をそれぞれ直接的な負担・間接的な負担に分担して整理していき、支援方法を検討します。

実際に下記で提示する症例にも上記評価を行った上で、実生活での負担を会話の中から導き出していきました。

【症例紹介】

年齢60歳代
疾患名(症状)右視床出血(左片麻痺)
期間半年前に発症
自宅へ退院されて、約1ヶ月が経過
生活状況立ち座りや杖歩行、トイレ動作は自立
入浴や更衣に介助が必要
主訴(本人様)家族にすごい負担を掛けていて申し訳ない気持ち
     お風呂は気持ちがいいけど、怖い

(家族様)お風呂に1番時間が掛かっていて(1時間ほど)、手も掛かるし非常に大変
     でもお風呂に入ると気分が明るくなって健康的な感じ
ご希望本人様:「できる限り、自分でお風呂に入れるようになって毎日入りたい」
ご家族様:「楽にお風呂に入れてあげたい」

上記のような症例であると、まずは「入浴動作」に問題があることが分かります。

掛かっている負担を紐解いていくと、下記のようになります。

  • 身体的負担:お風呂の準備などが多く、身体が辛くなってくる

        時間的な余裕がなく、ゆっくりと身体が休まらない(時間的負担)

        趣味の時間が確保できない(時間的負担)

       

  • 心理的負担:本人にとっては良いことでも、それを継続できない気持ちが少しある

       無理をするのが当たり前になると、眠れなくなり何もかもがしんどくなる

上記背景をもとに当施設での関わり合いとしては、以下が挙げられます。

① 動作能力の向上

 入浴に要する基本的な動作を細分化して、「シャワーチェアでの立ち座り」、「浴槽への乗り移り」、その他に入浴に関わる周辺動作(更衣や整容)などのベースの動作能力の向上を図ります。

本症例の場合:

 シャワーチェアでの立ち座りは可能でしたが、浴槽ボード上で麻痺した足を持ち上げることが困難であり、手すりを持っていないと不安定な状態でした。椅子やボードに腰掛けた状態で手を伸ばすことができる、足を動かすことができる能力が必要となります。

② 入浴動作方法および介助方法の検討・提案

 ①と並行して、現状の能力を加味してどのような方法であれば、安全かつ安楽に入浴が可能か検討していきます。実際に入浴場面を評価して、本当に必要な介助なのかどうかなどもチェックしていきます。

本症例の場合:

必要以上に介助をしてしまっていた部分もあり、本人様・家族様ともに「できるとは思わなかった」と感じている要素がありました。本人様の能力を最大限に発揮した上で、身体の状況に合わせて実施方法を選択していく必要性があります。また、浴槽の出入り手順は(右足→左足)へと変更、手すりを常時使用できるように出入りで浴槽ボードの位置を変更させました。

③ 環境調整

 浴室環境によって、②の検討・提案の内容が異なってきます。使用している福祉用具を変更するだけでも身体的負担が軽減することもあります。こちらも本当に必要な福祉用具なのか、見極めて適応性をチェックします。

本症例の場合:

浴槽台やシャワーチェア、車椅子などを使用されており、準備物も多いとうことが負担増加に繋がっておりました。使用物品をシャワーチェア・浴槽ボードに絞り、シャワーチェアを車輪付きのタイプに変更、前述したように浴槽ボードの使い方変更しました。

結果として、双方ともに「だいぶ楽になりました。時間も半分くらい短縮できています」とのお声をいただいております。

以上のように、本症例でメインとなっていた負担としては、「身体的・時間的負担」でした。

リハビリにて直接的にアプローチできる要素が多かったため、1時間要していた入浴動作が30分ほどで可能となり、なおかつ介助者の負担は減少(質問紙の結果上)、本人様も気持ちよく入浴できることが可能となりました。

ただ、入浴動作に要していた介助負担が減ると、相対的に周辺動作(特に更衣)に問題があったことも気づくことができ、アプローチポイントが入浴動作→更衣動作に変化することができます。

このように1つずつ負担が掛かっている部分を洗い出し、方向性をしっかりと共有することが当施設で心掛けている点となり、リハビリそのものに時間的な余裕があるからこそ可能な部分ではあると感じています。

本症例もこれで問題解決ではなく、状況に合わせてステップアップしていくこと、心理的負担にもつながる「趣味の時間が確保できない」といった問題を解決させていくことといったように多岐に渡る介護負担感の要因を把握した上で、リハビリの方向性を決定していきます。

今回は利用者様目線ではなく、周囲の家族様目線でのお話しとなりました。

本日紹介した症例はごく一部であり、各ご家庭で異なった問題がいくつも存在します。

お一人で悩まれず、ぜひともご相談くださいませ。

不明点などありましたら、お気軽にお問い合わせください。