脳卒中後の麻痺といえば、
「力が勝手に入って、動かしにくい」
「力が入らず、ほとんど動かない」
このような麻痺の程度に差が出ますよね。
「そもそも脳出血と脳梗塞で症状は一緒なのか?」
「リハビリにおいて把握する必要性があることは?」
このような質問に対して
今回は、脳出血・脳梗塞といった発症機序の違いが
リハビリへ与える影響について説明します。
特に「脳出血」に着目していきます!
このブログを読むことで、以下のことが分かります!
① 脳出血と脳梗塞についてのおさらい
② 発症機序の違いと症状の差について
③ 脳出血後のリハビリで理解すべきこと
目次
(1) 脳出血と脳梗塞の違いについて
(1)-1 脳出血
血管が破れてしまうことで脳内に血液が流出してしまう状態
(1)-2 脳梗塞
血管が詰まり、血液が流れなくなることで、
その先へ酸素や栄養を運べなくなってしまう状態
もちろん発生機序が異なるため、同じような治療選択にはなりません。
脳出血は、内服薬または血の塊を取り除く外科的治療が選択されます。
脳梗塞は、t-PA治療といった点滴にて血栓を溶かすことや
直接的に血栓にアプローチするカテーテル治療などが選択されます。
それでは、発症後リハビリをする上での違いはどこにあるのでしょうか?
(2) 発症機序からみた脳出血・梗塞後遺症の違い
リハビリをする上で問題となる脳出血・梗塞後遺症を
捉えるためには、以下の点が大事になります。
それは、
脳内に与えたダメージが「何によって」「どこに」生じたか
という点です。
これを把握することで
症状理解やリハビリの方向性が
定まりやすくなります。
(2)-1 出血 or 梗塞:「何によって?」
血液が流出する出血
血液の流れが滞る梗塞
「何によって?」というのは、もう少し発生した出血・梗塞の過程を見ていくと分かります。
- 脳出血の場合:
出血が生じると、血液が脳内を急激に圧迫する
→脳が本来ある位置から飛び出てしまう(=脳ヘルニア)
→最終的には壊死と呼ばれる細胞の死へ
- 脳梗塞の場合:
梗塞が生じると、血液の流れが滞り、浮腫が生じる
→周辺の血管で修復しようとする
→修復が難しくなると、出血同様に壊死に至る
両者とも最終的に壊死が生じる点は共通しています。
しかし、発症初期に大きな違いがあります。
「出血で滲み出て圧迫するのか?」
「梗塞で循環不良を引き起こすのか?」
この違いをもとにして、「どこに?」という点を続いて見てみましょう。
(2)-2 出血 or 梗塞:「どこに?」
人間の身体は「細胞」でできています。
その中でも脳は「神経細胞」から構成されています。
これらは電気信号を発して情報のやり取りをしています。
この情報のやりとりには、「神経線維」と呼ばれる神経細胞からの突起を利用します。
これには、いくつか種類があります。
- 交連線維:左右の脳で連絡する線維
- 連合線維:同側の脳内で連絡を持つ線維
- 投射線維:脳幹・脊髄・小脳へ連絡する線維
「神経細胞「神経線維」
このどちらにダメージを負ってしまうか
これが大まかな「どこに?」という部分を指しています。
以上をまとめてみましょう。
(2)-3 脳出血と脳梗塞後の症状が成立する過程
脳出血は流出した血液によって、
まずは「神経細胞」よりも「神経線維」に悪影響を及ぼします。
例を挙げると、電気の基盤に水をかけるとショートしますよね。
これと似たような形で、出血により脳内が水浸しになると、
連絡の役割を有する「神経線維」に問題が生じてきます。
情報のやり取りが難しくなると、
筋肉に力が入りにくくなったり
筋肉の緊張を調節することが難しくなったりします。
「神経細胞」に関しては、その後の圧迫によって問題が生じ、
最終的には両者ともに問題が生じます。
一方、脳梗塞は血栓などにより血液の流れが滞ることで
「神経細胞」に酸素や栄養が届かなくなります。
そのため、「神経線維」よりも根本の「神経細胞」に悪影響を及ぼします。
その結果、情報伝達の役割を有する「神経線維」にも問題が出ます。
出血と大きく異なる点は、「周辺組織が修復を手伝ってもらえるか」です。
初期の段階では、病的な変化がはっきりしないのです。
じわじわと「神経細胞」が壊死していくことになります(梗塞の種類にもよります!)。
このように簡単にまとめると、以下のような過程になります。
脳出血:「神経線維」→徐々に「神経細胞」
脳梗塞:徐々に「神経細胞」→「神経線維」
(3) リハビリとの関連性
脳出血において、「神経細胞」「神経線維」のどちらが
重症度に関わりやすいかというと「神経線維」になります。
脳には内包とよばれる「神経線維の通り道」が存在します。
ここに出血の影響が及ぶかどうか、で症状が大きく変わってきます。
出血の大小というよりも脳内でもどの部位に出血が影響するか
これが大事ということですね。
内包に出血が及んでいるかどうか、というのを脳画像でチェックします。
脳梗塞リハビリRoomアイ・エスでも
退院後に提供された脳画像の情報があれば、
それをもとに大まかな症状把握やリハビリ内容を検討しています。
ない場合には、症状から出血部位や範囲などを推測しています。
特にリハビリで関わる機会が多い症状としては、
痙縮といった筋緊張の異常です。
緊張をコントロールしている経路が存在し、そこに出血がかかると
痙縮が強く生じてしまうことがあります。
そのため、出血の場合は痙縮のコントロールが大事になります。
具体的なリハビリ方法については、次回紹介できればと思います。
脳出血後遺症で、
「どうしても動くと力が勝手に入ってしまう」
「うまく麻痺した手足を動かせない」
といったお悩みをお持ちの方は
ぜひとも脳梗塞リハビリRoomアイ・エスに1度ご相談いただければと思います。