お知らせ

パーキンソン病「すくみ足」に対するリハビリ

2022.11.25

こんにちは!

以前、下記のパーキンソン病についてご紹介しました。

そこで、今回は「すくみ足」という症状をピックアップして、それに対するリハビリ内容を説明します。

「すくみ足」とは?

歩き始めになかなか1歩目を踏み出すことができない状態です。

また、歩行の開始時に限らず、歩行中にも足の裏があたかもへばりついたようになって、歩けなくなる状態のことを指します。

一方で、階段の昇り降りや一定間隔の障害物を跨いで歩くとスタスタと平気で歩けることもあります。

これは「逆説的歩行」と呼ばれており、「すくみ足」の特徴でもあります。

発生するメカニズムは、いくつかのモデルが提唱されていますが、はっきりと分かっていません。

しかし、不安や恐怖心などの精神的な緊張、目に映る視覚的な刺激によって良くも悪くも影響されてしまいます。

そのため、日常生活に与える影響が大きく、利用者様を悩ます重要な問題となりえます。

さらに、すくみ足による転倒がさらなるすくみ足を誘発させてしまう可能性があり、リハビリにおいては対処が求められる大きな症状の1つです。

「すくみ足」の対処方法は?

 “キュー”と呼ばれる刺激を用いることが推奨されています。

キューは、以下の2種類に分類されます。

  • 内的キュー:自発的に得られる刺激

   伴奏など音楽がない状態で、歌を歌う

  • 外的キュー:外部の環境から得られる刺激

   目で見る:床の模様に沿って歩く

   音で聞く:音楽に合わせて歩く

   身体の一部に触れる:自分の足を叩いて歩く

この中でも「外的キュー」を用いたリハビリが有名かと思います。

さらに外的キューは、以下に分類されます。

  • 1回限りのキュー:運動や動作の開始時に有効

   視覚:上下逆さにした杖の持ち手を踏み越える様に足を出す

   聴覚:「1、2、3」と掛け声に合わせて「3」のときに足を出す

  • 繰り返しのキュー:運動や動作を持続させる時に有効

   視覚:他の人の真似をする  

   聴覚:メトロノームの拍子に合わせて動く 

以上のようにキュー1つをとっても用いる種類によって効果が左右されます。

利用者様の状態によって大きく変化するため、効果のある可能性の高いキューを探すことが最も重要になります。

事例紹介

さて、ここで以前のブログで紹介した事例についてみてみましょう。

この方は「横断歩道を渡り切れるか心配」ということでした。

横断歩道を渡り切るためには、

「信号が青に切り替わってからスムーズに歩き出すこと」

「横断歩道の途中で立ち止まらないこと」

が必要です。

いくつかの検査のもと、「歩き始め」の問題もありました。

しかし、「横断歩道」という特徴的な環境を考慮すると、「時間内に歩き切れるか」という点が最重要課題と考えました。

そこで使用した外的キューが「リズミカルな繰り返しキュー」となります。

  • 階段昇り降りの練習
  • 一定間隔に置いた障害物を跨ぐ練習
  • 音楽や一定リズムの声掛けに合わせた歩行練習

上記を積極的にリハビリに取り入れることで、すくみ足の軽減を認めることができました!

逆説的歩行の観点から考えると、「横断歩道は一定間隔で歩きやすいのではないか?」と思いませんか?

しかし、以下の環境による変化が横断歩道の歩行を難しくさせているのではないかと考えています。

  • 横断歩道の長さ
  • 白線間隔(太さ)の違い
  • 人混みの有無
  • 青信号の保持時間

外的キュー以外の要素で、特に焦りを生じさせやすい「人混み+時間制限」はすくみ足に繋がりやすいかもしれません。

このように「どこの」「どんな」「問題」があるのか、しっかりと見極めることが必要となります。

外的キューは万能薬?

さて、ここまでは外的キューのメリットや実際に効果を表した例を挙げてきましたが、それだけで問題解決なのでしょうか?

答えは、、NOです!

パーキンソン病は進行性疾患であり、その進行度合いにより対応が変化します。

「すくみ足」以外の症状経過に注意を向けながら、総合的な判断をして、適切なタイミングをもとに選択していく必要性があります。

また、外的キューよりも内的キューの方が有効と報告されているケースもあるようです。[1]

外的キューの頻度を過度に増やしてしまうことで、すくみ足のある方には却って症状を誘発してしまうこともあります。

加えて、すくみ足の発生予防としてなのか、そもそもすくみ足を既に有しているのか、という違いだけでも効果が変化すると考えられており、適切な使い分けが求められるといえます。

日々の変化にしっかりと向き合いながら、適切な予防や対処方法を選択していくリハビリの流れを共に構築していきたいですね。

以上のように、今回は「すくみ足」のリハビリについてご紹介しました。

歩きにくさが生じると、歩くのが怖い・動きたくない・転倒したくない、といった感情から悪循環が生じやすいです。

体験プログラムでは、すくみ足の状態や日常生活上の問題点を把握した上で、解決策に近づくリハビリプログラムをご一緒に検討していきます!

すくみ足でお悩みの方、ぜひとも脳梗塞リハビリRoomアイ・エスに1度ご相談いただければと思います。

出典

[1] パーキンソン病患者のすくみ足における内的リズム形成障害と遂行機能の関連

https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/40/3/40_348/_pdf