こんにちは。
暑くなったり寒くなったり、気温差は変わらずですが、枚方市では少しずつ過ごしやすくなってきたように感じます。
さて、2022年も残り3ヶ月を切ったということもあり、問い合わせ内容や利用者様の総数などいくつかデータを整理していました。
すると、前年よりも「リハビリ病院から退院後、そのまま自費リハビリ施設を利用する・体験する・検討する」という方が増えていました!
実際に病院からのお問い合わせやご紹介などもいただく機会があり、中には入院中に退院後のリハビリ先を探されている方もいらっしゃいました。
それだけ発症してからの早期・集中リハビリの重要性を理解されているのではないか、と感じています。
そこで、本日は「脳梗塞発症からの経過日数」に焦点を当て、リハビリ内容に変化があるのか?という点を深掘りしていきましょう。
特に当施設脳梗塞リハビリRoomアイ・エスを利用される方は、最短でも脳梗塞発症後3ヶ月~6ヶ月を経過している方が多いと思いますので、その時期に重要な視点を説明したいと思います。
また、過去には「発症してから1年以上経つけど、脳梗塞後遺症は良くなるの?」という発症からの経過日数に対して記事を簡単にまとめております。
併せてチェックしていただければと思います。
脳梗塞発症後の主たる経過について
① 急性期:発症直後の治療段階(発症から1~2ヶ月)
② 回復期:さらなる機能回復のためのリハビリ段階(発症後3ヶ月~6ヶ月)
③ 生活期・維持期:日常生活に戻る段階(発症後6ヶ月以降)
一般的には上記のような経過を辿り、個人差はありますが、退院や転院・転棟など回復状況に併せて生活環境が変化していきます。
一方、目には見えない脳内での神経細胞の変化はどのような経過を辿るのでしょうか?
① 急性期:
残存している神経回路の興奮性を高めて、機能回復を促進する時期
② 回復期:
損傷とは反対側の脳との新しいネットワークを再構築する時期
③ 生活期・維持期:
回復期で再構築された新しいネットワークの効率化による強化と確立される時期
以上のような経時的な変化を示すと言われています。[1]
脳梗塞発症後3~6ヶ月で大事にしたいこと
3~6ヶ月に該当する「回復期」の段階で大事にしたいことは、前時期に該当する「急性期」で得られた効果を引き継ぎながら、新しいネットワークを構築していくことになります。
そのための手段として推奨されているのは、課題指向型トレーニングです。
・課題指向型トレーニング:
対象となる方の状況や環境を考え、行動目標を明確にした上で様々な条件下で課題を定めて、難易度を変化させていきながら反復練習することで運動能力を改善させる方法です。
それに加えて、「日常生活動作の練習をするだけでなく、その課題(動作)を行うことでその課題に要求されている機能が、課題の要求に従って自律的に組織化されることを含んでいる」と定義されています。[2]
難しい言葉が並びましたので、一例をご紹介します。
<リハビリ事例紹介>
脳出血後、右上肢の麻痺あり、特に指先が上手く動かしにくい
専業主婦として、調理・洗濯・掃除などの家庭内役割あり
「少しでも以前のように自分でできることが増えるようにしたい」というご希望
まずは、洗濯動作の役割を獲得できることを目標にリハビリ開始
- 物干し竿の高さを適宜調整
- 洗濯バサミの大きさやバネの強さを適宜変化
- 干す物(服やタオル、靴下など)を調整
- 干し方を変更(ハンガーを使用するなど)
- 実際の自宅環境でも並行して実施
- 実施中の動画を撮影して、動きの良かった点をお伝えする
などなど
以上のような流れで新しいネットワークを構築していくイメージとなります。
ただただ反復した練習を遂行すればいい!という話ではなく、一つ一つの課題に意味をしっかりと持たせて、それでいて利用者様が自律的に行動される、という一連の流れが重要になります。
また、課題指向型トレーニングに移る前にしっかりとしたヒヤリング時間を設けることも重要です。
前述したように「急性期」での機能回復に繋がりを持たせていくイメージになりますので、入院中のリハビリ内容なども細かく聴いていくことになります。
★どれだけ麻痺した手足を使用できていたかなどの活動性
★動きにくくても電気刺激などで運動をしていたかなどの感覚刺激の機会
★何のために、リハビリを行っていたかの理解度
上記を徹底して確認していきながら、現在の状態と照らし合わせて課題や難易度設定を行なっていきます。
脳梗塞リハビリは「線」で捉えて、初めて形に意味をなす
今回は発症からの経過日数に着目したリハビリ内容についてまとめましたが、その期別毎に「点」でリハビリを捉えることのないように注意が必要です。
病期や回復時期によって主たる目的や手段が変化しますが、最初から最後まで「線」で捉えていくことが目標達成に近づく考え方の1つと思います。
冒頭でも紹介しましたが、病院からの問い合わせが増えてきている以上、バトンをしっかりと引き継ぎ、シームレスなリハビリを提供できるように努めてまいります。
どのような経過を辿ってきたか、頭では理解が難くても身体から発しているメッセージは十分にあると思いますので、そのメッセージを「線」で繋げていきましょう!
出典:
[1] 原 寛美:急性期から開始する脳卒中リハビリテーションの理論と実際
https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/51/11/51_11_1059/_pdf/-char/ja
[2] 諸橋 勇:脳卒中患者に対する課題指向型アプローチ -課題指向型アプローチと運動学習に基づいた介入の考え方-
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/45S1/0/45S1_31/_pdf/-char/ja