こんにちは。
早いもので10月を迎え、今年も残すところ3ヶ月を切りましたね。
今年も高い気温を記録した枚方市でも肌寒くなってきております。
朝晩の気温差も大きくなっておりますので、体調管理に注意していきます!
本日は、テーマにある通り「姿勢」に関するお話をピックアップしました。
先日、左半身の麻痺でお悩みのご利用者様より
「姿勢を良くした方がいいと言われたことがあるけど、イメージできない」
といった声をお聴きすることがありましたので、そちらを解説できればと思います。
「良い姿勢」の条件は何だろう?
まず脳梗塞後遺症の方だけに限った話ではなく、ヒトとして生きる上での「姿勢」の捉え方について説明します。
姿勢が良い・悪いの判断基準は、“どのような視点で姿勢を捉えるか”という点により異なります。
以下の5つの判断基準によって良し悪しを判断していくと考えられています。[1]
■力学的視点:重心と支持する面の位置関係が適切か
両足の支持面に対して重心位置が離れてしまうと不安定(=猫背)
■生理学的視点:疲労がしにくいか
長時間のデスクワークによる筋疲労など
■心理学的視点:恐怖心などが少なく、心理状態が落ち着いているか
怖くて肩がすくむ、悲しくて背中が曲がってしまうなど
■作業能率的視点:最も作業に適した効率の良いか
作業で動く前の姿勢によって持続できる時間が変化してくるなど
■美学的視点:見ていて美しい
バランスや左右対称性など
特に力学的視点・生理学的視点は、退院後に生活する上で土台となり、職場復帰や趣味活動の再開などにも幅広く密に関与してきます。
脳梗塞後に生じやすい「姿勢」って?
脳梗塞後遺症の代表的な症状として、運動麻痺があります。
それと密接に関与しているのが「痙縮」と呼ばれる運動障害であり、下の写真のような姿勢を呈することがあります。
それでは、先述した5つの視点で判断してみましょう。
■力学的視点:身体が前傾しており、右側にも偏っている
■生理学的視点:左足の支持量が少ないと推測、右足の疲労は生じやすそう
■心理学的視点:いつ転んでも大丈夫なように右手をベッドに近づけている
■作業能率的視点:作業内容にもよるが、長続きはしなさそう
■美学的視点:左右の非対称性あり
よって、この写真だけで判断した場合には、こちらの立位姿勢は「良いとは判断できない」ことになります。
それでは、何故このような姿勢になってしまうのでしょうか?
「姿勢」はただの一部分の切り抜き
ここで大事なのは上記のような良い・悪いの判断だけでなく、「姿勢の見方」になります。以下のような捉え方をすることで解釈がしやすくなります。[2]
姿勢を単一的な切り抜き写真として捉えるのではなく、ヒトの思いや考えの表現系として捉えると、以下の3つに分類されるそうです。
① 結果の表現:病態的な問題で、脳梗塞後遺症により生じやすい姿勢
② 過程の表現:目的を達成しようとする過程での姿勢変化
③ 開始の表現:運動開始時に認められる姿勢
「姿勢=結果」として捉えるだけでなく、その姿勢に至るまでの過程が大事になります。
先程の写真では立った姿勢を示しておりましたが、立つ前に必要な「座った姿勢=開始姿勢」も見てみましょう。
座っている時から左手・肘が曲がっていることが確認でき、左踵も床に着けるには膝を伸ばさないといけない状態ということが分かります。
この状態で、「転倒しないように安全に立ち上がって保持する」という目的を達成しようとした結果、不安定な姿勢に繋がったと考えられます。
この形で突き詰めていくと、寝た姿勢から起き上がって、座った姿勢までの流れも確認が必要となりますよね。
このように「姿勢と動作・運動」は切っても切り離せないものであり、姿勢だけを意識しようとすると却って良くない姿勢に繋がる可能性も大いにあります。
これは、普段のリハビリから写真や動画撮影をする際にも同様の説明を行っています。自宅で行っていただきたい自主練習の方法なども書面(静止画)でお伝えするよりも動画をお渡しして一連の動きが認識できるように工夫しています。
そうすることにより、利用者様自体が自分の問題点に気付く場面もあり、能動的なリハビリ姿勢をさらに強化することが可能となります。
あとは目で見るだけでなく、実際に骨や関節、筋肉などを触れることでどのような問題が生じているか判断しやすくなります。
姿勢をコントロールする上で必要なこと
最後に、今回のテーマである「良い姿勢はどのようなものか?」という点については、「考えなしでバランスが取れる状態」を指します。
無意識に、どのような外乱・内乱が生じたとしてもいつでも対応ができる状態がとれているかどうか、ということです。
このためには筋肉や関節といった動かされる軟部組織の状態を良好に保つことはもちろんのこと、適切な運動や動作を学習していく必要性があります。
姿勢の一部分を切り抜くことは時には大事なことではありますが、そこに執着しすぎないようにしていただければと思います!
個人差も非常に大きい部分ではありますので、ぜひとも体験プログラムをご利用いただければ幸いです。
出典:
[1] 中村 隆一 他:基礎運動学 第6版
[2] 星 文彦:姿勢をアクティブにとらえる