こんにちは!
本日も「歩行」に関するテーマを取り上げていきたいと思います。
“歩き始めに思うように脚が出てくれない”
“歩いている途中に脚が出なくなって、立ち止まってしまう”
このような歩行時の「脚の出にくさ」についてお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
先週のブログでは歩行の「効率性」についてお話をしましたが、脚が出にくい状態は効率性にも大きく関わってくる問題です。
それでは、脚に麻痺があるから、脚が出にくくなるのでしょうか?
脚が出にくくなってしまう要因をいくつか整理し、それに対するチェックポイントをご説明します。
(1) 歩行中の脚の“出やすさ“とはいかに?
「歩いている時に脚が出やすいか、出にくいか」
これは“動きにくさ”、“重怠さ”などのように主観的な訴えとなります。ですので、カウンセリングなどから出現時期や程度などをチェックしています。
一方、客観的に出にくいと判断する要素としては、以下が挙げられます。
- 歩き始めに時間が掛かっている、転けそうになってしまう
- 歩いている途中に立ち止まってしまう、足先が床に引っ掛かってしまう
- 歩行全般に時間が掛かってしまう
動作を観察する上で、上記のように安全かどうか(転倒傾向の回数、介助の必要回数など)、所要時間はどの程度か(10m歩行時間、立ち止まり回数など)をチェックして判断しております。
このように主観的な訴えと客観的な動作指標などを基にして、「出にくさ」という抽象的な症状の要因を分析していきます。
それでは、歩いているときの「脚を出す」という行為はどのように行われているのでしょうか。
(2) 歩行動作の脚の振り出し
まず、歩行動作における最初の1歩目というのは、特別な動きになります。何が特別かというと、歩行場面では珍しい「意識的に開始される動き」になる点です。
歩行は1度開始されると、環境面での変化(凸凹や敷居などの小さな段差など)や歩き方に(大股や速歩きなど)条件を付けない限りは、自動化されて無意識下でコントロールされるという特徴があります。
ですので、最初だけ身体の内部で引き起こされる活動によって脚が振り出され、それ以降は勝手に脚が出ているということになります。よく例えに出されるのは、「振り子」です。
上図でありますと、手で持っている部分が「膝」、左右に振られる5円玉部分が「足」に例えることができ、手で動かすと5円玉には慣性力が働き、勝手に振り出されるということです。
そして、止まる際には再度意識的な動きに切り替わり、歩行動作が終了するという流れになります。
(3) 麻痺がある脚は出しにくい?
前述したとおり、歩き始めの特性を考えると、麻痺した脚から歩行を開始しようとすると意識的な運動が難しくなっているので、出しにくくなってしまうということになります。
そのため、意識的か否かという特性だけに絞って対応策を検討すると、歩行開始時には「麻痺していない脚から出す」ことで歩き始めの問題はカバーすることができるということです。
続いて問題になるのが、「歩行中に無意識に脚が振り出されるか」という点になります。無意識に振り出されるためには、反対側の脚にしっかりと体重を掛けることができるかどうかが重要になってきます。
そのチェックポイントとしては、以下の通りです。
- 立った姿勢は左右対称ですか?左右どちらかに偏っていませんか?
- そのまま左右に体重移動することは可能ですか?
- 麻痺していない脚で片脚立ちを一瞬でも行うことができますか?
これらの条件をクリアできると、無意識に脚を振り出すということを脳が学習していくようになります。
この学習効果をより高めるためにも、120分間の長時間リハビリにて積極的な反復練習を導入することで「脚の出しにくさ」に変化をつけることは可能となります。
自宅で客観的に判断することが難しい方も是非とも当施設の体験プログラムをご利用いただきまして、あなたの「脚の出しにくさ」の改善に向けてアプローチ手段をご一緒に考えていきませんか?
歩行時の「脚の出しにくさ」でお悩みの方、ぜひともあなたのお悩みをお聞かせください。
理学療法士 長尾 侑治