お知らせ

事例紹介 脳出血後の職場復帰への道のり Part.1

2021.07.07

こんにちは!
梅雨らしいジメジメとした暑さが続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。

本日のテーマは、“職場復帰”についてです。

「仕事への復帰は諦めてください」

と入院中に言われた経験はありますでしょうか。

生活の一部分を占める「働く」ということを突然諦めなければいけない状況に直面し、上記のような言葉を受けたとき、ヒトはどのような思いを抱くのでしょうか。
本日は、過去に復職へ向けた関わり合いを経験させていただいた1事例を紹介しながら説明させていただきます。非常に長くなるかと思いますので、いくつかのPartに分けて投稿します。

症例紹介

年齢50歳代
性別女性
職業保育士
疾患・症状右視床出血(左片麻痺)
退院直後の生活状況・屋内移動伝い歩き自立
・屋外多点杖歩行見守り(合計200〜300mほど可能も時間が掛かる)
・屋外用に電動車椅子もレンタル済み
・入浴はヘルパーさんの見守り
・炊事などもヘルパーさんに協力依頼していた
退院直後のリハビリ状況訪問でのリハビリ(週3回)
主訴絶対、今年中に保育士に復帰する!
そのためにも家を出て、1人でも外出できるようになる!

初めてお会いしたときにこのような主訴があり、この方の生活にとって何よりも仕事の重要性が非常に高いと伝わってきたことを今でも覚えています。
また、定年が近づいていたこともあり、期日が「今年中」と決定していた背景からも相当な焦りがあったのではないかと思います。

リハビリ職視点での職場復帰に向けて整理したポイントは、下記の通りになります。

(1) 職場復帰以外の生活に対しての問題点はどのように対処していくか

自宅で安全に過ごせる状況というのは、生活における土台の部分になります。ここを抜きにして職場復帰など屋外での活動について話を進めていくことは非常に難しくなり、「安全性」という側面は無視できない要素となります。

本症例の生活の中で問題となっていたのは、自宅内での“転倒”です。退院直後は生活動線の確立や支持物の使用方法など不十分でありました。また、病室→自宅といった環境面の急激な変化や毎日あったリハビリの頻度が減少したことの影響で、動作が非常に行いにくくなったとの訴えがありました。

そのための身体作りや積極的な動作練習、環境調整、自主練習方法や生活面への指導などを重ねて転倒予防・再発防止に向けたアプローチを実施しておりました。加えて、床からの立ち上がりなど転倒後の状況も想定した上での対応方法も練習を行っていました。

転倒頻度の減少といった「安全性」に加えて、動作方法などの一貫性が高まるといった「安定性」が確保された段階で“屋外活動への働きかけ”といった次なるステップへ移行しました。

そこで次なる問題点は、気軽に外出できる環境が設定されていなかったことです。自宅内での転倒を防ぐために、退院直後より徹底した安全策をされていたことが却って外出を阻害してしまう結果となってしまいました。

特に外出に必要な玄関上がり框部分の段差は、両側手すりとステップ台が設置されており、その横には手すりとステップ台によって出し入れ困難な形で電動車椅子が収納されているという環境でした。

引用:https://www.kaigo-rental.com/SHOP/36781130.html
どこでも手すり 上がりかまち用 ステップ台 FB-S21N(フランスベッド)

このような環境では、「外出=歩いて移動すること」になってしまい、現に自主的に積極的な屋外歩行練習を積み重ねておりました。身体機能的にも動作能力的にも良い側面はあったかもしれません。ですが、“気軽に外出すること”、“職場復帰すること”を先に見据えたときには、全て歩いて外出することが現実的かどうかを本人様と相談の上、検討しました。

結論としては、(3)項にて後述しますが、片側の手すりだけでも上がり框の昇り降りが可能になれば電動車椅子を使用して外出するという選択肢が増えることになります。

よって、片側手すりでの安全な上がり框の昇り降りが次なる目標となり、無事に環境を変更することができました。

職場復帰という大きな目標に対して、選択肢をいくつか用意することができる状況ということは、大きなアドバンテージになり得ます。「本当にこの方法しかないのか?」と問いかけ続けることが新たな視点を切り開くチャンスを掴むことができるかと思います。

Part.2へ続きます。

理学療法士 長尾 侑治