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こんにちは。
本日は退院後の生活で悩まれる方が多いと思われる「装具」についてご説明します。
その代表的な悩みとは、「装具を外していきたい」、「外へ出かける時の見栄えをどうにかしたい」などが挙げられます。
私がこれまで経験してきたケースとしては、下記となります。
- 急なトイレに間に合わないから、家の中だけ装具を外して動けるようになりたい
- 実家が雪国なので、外では装具着けながら長靴を履けるようになりたい
本日は、「装具を外したい」と希望されている利用者様の1症例をピックアップし、どのような対応を進めていったかをご説明します。
(1) 脳梗塞後の装具着用の必要性
(1)-1 「装具を外して、安心してトイレに行きたい」事例紹介
年齢 | 70歳代 |
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性別 | 女性 |
疾患・症状 | 右視床出血(左片麻痺) |
退院直後の生活状況 | 自宅内の移動は多点杖にて自立、入浴動作はヘルパー利用 |
使用装具 | ① 金属支柱付き靴型短下肢装具(移動用) ② プラスチック短下肢装具(入浴用) |
(1)-2 装具に対する思い
- 装具が重くて歩きにくい
- 着け外しに時間が掛かり、トイレに間に合うか不安になることが多い(失敗もある)
実際に行った流れは、以下の通りです。
(2) 装具に対しての考え方フローチャート
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(2)-1 「何故、装具を外したいのか?」「装具を外した結果、どうなれば良いのか?」
装具の必要性を十分に理解していても、利用者様の諦めきれない本当の思いが胸に隠されているケースを多くみられます。それが無理難題だとしてもチャレンジの有無によっては今後の方向性が大きく変わってきます。
【本症例の場合】
- トイレに失敗したくないこと
- ポータブルトイレなどを設置したくないという強い思い
→ 起きてすぐに歩き出せる状況を作り出せれば、「安心」である
- 装具が重くて移動する気が滅入ってしまう
→ 以前のように気軽に外出し、ご友人と喫茶店でお話できれば「楽しみ」である
(2)-2 「装具を外すかどうか」は、その動作が「安全であるか?」が大事
転倒しないか?といった動作面での安全性はもちろんのこと、今後の身体機能に悪影響を及ぼす(代表例では痛みなど)ことはないかといった面も身体の安全性という意味合いで検討する必要性があります。
【本症例の場合】
- 装具を外すと、足首が内側に反り返りやすくなり、転倒リスクがやや増える
- 上記は装具着用中にも同様に生じており、程度の差はそれほど大きくない
→ 足首が反り返りやすくなるタイミングが足を振り出すときであり、足の出し方が変われば、装具の有無に安全性が左右されにくくなると判断した
- 足の指が曲がってしまいやすく、爪を保護するなどの管理が必要となる
→ 滑り止め靴下を着用し、裸足では歩かない工夫やご家族様への定期的な皮膚や爪のチェックをご依頼した
(2)-3「装具を外す」・「装具を外さない」といった両者の利点・欠点
【本症例の場合】
■「外す」
利点 | トイレへの移動に掛かる時間が短縮される、重さのストレスが減る |
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欠点 | 入念な足のケアが必要になる、足の出し方に対する練習が今よりも必要 |
■「外さない」
利点 | 転倒するリスクは高くならない |
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欠点 | トイレに失敗するリスクは変わらない、長期的に活動量が減る可能性がある |
(2)-4 「装具を外す」・「装具を外さない」を整理して、天秤にかける
(2)-5 「装具を外す」「装具を外さない」のどちらかを選択
【本症例の場合】
「外す」を選択され、最終的には裸足歩行の獲得に至った。
しかし、いきなり装具なしでの生活ではなく、入浴用に使用していたプラスチック装具や足サポーターなどを有効活用し、段階的に進めていくことに了承を得て、約3ヶ月間で「外す」ことができた。
以上のように、利用者様の背景(入院中のリハビリ経過、生活スタイル、目指すべき理想像など)を把握した上で、選択肢を増やしていくことが私たちの役割となります。
(3) 脳梗塞後の装具に対するまとめ
入院期間中に装具の必要性をしっかりと理解され、退院後も指導内容を守って生活されている中、このような思いをふと抱く利用者様は決して少なくありません。
入院期間中より装具を外すことを最終目標としておりましたが、なかなか担当セラピストにその思いを伝えることができなかった利用者様もいらっしゃいました。
私たちとしましても、しっかりと地域と連携図りながら、入院期間中のリハビリ状況や装具処方に至った経緯などを明確に把握していくことに努めて参ります。
ぜひとも、装具に関するあなたのお悩みをお聞かせくださいませ!
少しでもご興味がありましたら、体験プログラムよりご用意しておりますので、お気軽にお問い合わせしていただけますと幸いでございます。
理学療法士 長尾 侑治