こんにちは!理学療法士の長尾です。
今回も事例紹介をさせていただきます。 先日「ご利用者様の声」で紹介させていただきました下記の利用者様
現在は、「1人で自立した生活が送れること」を大目標としてリハビリを進めています!
先日、家族様より
「言語機能の方も確認してもらいたいです。」
と相談がありました。
言語リハビリに関しては、かかりつけ医の外来リハビリを週1回受けています。
「普段の担当セラピストではなく、初めて顔を合わせるセラピストとのコミュニケーションがどのようにとれるか、という点を知りたい」というご要望でした。
これまで私の方で左上肢麻痺へのリハビリを進行していた時には、簡単な単語・短文、文面やジェスチャーにてコミュニケーションをとっていました。
問題なく進行できていたため、リハビリに支障はありませんでしたが、今後の「1人で自立した生活を送れること」を目指す上で、コミュニケーション能力は非常に重要な要素になります。
そこで今回、言語聴覚士の高木に協力をお願いしました!
現状の機能評価を進めてもらい、日常生活上のアドバイスや私のリハビリ進行時に注意することなどを教えてもらいました!
今回、チームとして利用者様のリハビリ提供ができたので、共有させていただきます。
現在の日常生活能力
まず初めに自立した生活を送るために必要な要素はいくつかあります。
それを表にしたものが下記となり、実際の具体的な事例を挙げながら、整理していきました。
引用:
高次脳機能障害支援の道しるべ〔就労・社会生活編〕
-復職・新規就労から就労継続までライフイベント別生活サポートのヒント–
赤いチェックマークは本人様の自己評価、青いチェックマークはお父様からの他者評価となります。
その結果、(6) 他人との意思伝達・対人関係の項目において、聞き取りおよび正確な理解が難しいと自己評価されていました。
言語リハビリの流れ
問題となる部分がどこにあるか、という点を明らかにするために1つ1つコミュニケーションをとりながら確認を進めていました。
- 文字の読み取り:プリントを示しながら「物品:時計」「身体:膝」など
- 物品の名前を答える:目の前に置かれた「ペン」など
- 文章の読み取り
- 口頭指示の聞き取りおよび遂行課題:「〇〇を持ってください」→「〇〇へ移動してください」
- 問題想起課題①:「〇〇の時どうすればいいか」を口頭で答える、 さらにそこから、なぜ?という点を答える
- 問題早期課題②:絵を見て問題となる点を4つ口頭で答える、さらにそこからどうすればよかったか?という点を深掘り
- 言い換え問題:主語などを変化させた中での選択(〇〇が〇〇に〇〇しているなど)
- 説明文理解・遂行課題:提示された説明文を読んで、折り紙を折っていく、さらに道具も用いていく
- 筆記課題:役所にある申請書などの作成、そこから住所から地名の深掘り
- メモ取り課題:40文字の文章を聞き、必要となるワードをメモしておく、その後いくつかの質問に答えてもらう
以上のような流れでした。
普段の外来リハビリでは机上でのプリント課題がメインだったこともあり、今回は日常生活に踏み込んだ課題をメインでピックアップされていました。
例えば、以下のような場面です。
・説明書を読んで、家具を組み立てる
・電話に出て、要件を聞く
・手続きに必要な申請書類の作成
全体の結果としては、セラピストが予測していた状態を大きく上回り、難しい課題へと展開できていたようです!
本人様も手応えを感じていたようでGOODポーズ👍を連発されていました!
「長尾先生、初めてここに来たとき、こんなに話せてましたか?」
と家族様の驚かれた姿もすごく印象的でした✨
私自身も率直に「すごい!」と思ったのと同時に、上肢のリハビリ時も、コミュニケーション面で工夫すべき点があったかもしれない、と反省しました。
それでも今後関わる中で、得意なこと・苦手なことがわかったことは大きな収穫となりました!
・どのような場面でヒントなど手がかりが必要か?
・どこまで、どのように深掘りしていくべきか?
上記2点がわかったこともあり、家族様も普段の日常生活で意識すべきポイントが明確になっていました。
今後は、「ご近所の方と簡単なお話ができること」や「電話に出てみること」などに発展していきたいとのご希望です。
これまで練習してきたことを発揮する場面をしっかりと設けることで、本人様の可能性を一気に引き出すことができるのでは、と強く感じた一例でした。
就労支援を見据えていることもあり、今後に向けて自己理解・他者理解という部分をさらに進めていければと思います。
最後に、出現している症状によりアプローチ方法は異なってきます。
ですが、対象となる方の「得意を引き出せる力」、「苦手を克服する力」を発揮するためにもチームで協力しながら、課題解決・目標達成に近づいていく形が望ましいと改めて感じました。
脳梗塞後遺症というのは、骨折などの整形疾患とは異なり、問題点が複数存在することが非常に多いと思います。
その中で「ここだけ良くなりたい!」ではなく、「ここも、ここも、ここも良くなりたい!」というご希望に応えることができるようにチーム力をしっかりと高めていきます。
チーム全体で皆様のお悩みに向き合っていきますので、ぜひともご相談お待ちしております!