こんにちは!
いよいよオリンピックが開催されましたね。
アスリートの戦う姿勢を目に焼き付けようと思います!
さて、本日で“職場復帰”についての事例紹介は最後となります。
前回までのおさらい
年齢 | 50歳代 |
性別 | 女性 |
職業 | 保育士 |
疾患・症状 | 右視床出血(左片麻痺) |
退院直後の生活状況 | ・屋内移動伝い歩き自立 ・屋外多点杖歩行見守り(合計200〜300mほど可能も時間が掛かる) ・屋外用に電動車椅子もレンタル済み ・入浴はヘルパーさんの見守り ・炊事などもヘルパーさんに協力依頼していた |
退院直後のリハビリ状況 | 訪問でのリハビリ(週3回) |
主訴 | 絶対、今年中に保育士に復帰する! そのためにも家を出て、1人でも外出できるようになる! |
前回は、上図の「復職までの流れとして整理したポイント」の(3)まで述べさせていただきましたので、本日は最後の(4)の説明とさせていただきます。
(4) 職場での移動含めた動作や環境面はどのように設定していくか
無事に安全な外出経路が確保でき、職場への通勤が可能となりましたので、いよいよ職場内での問題に着目していきます。本症例の場合、「原職の配置転換」という形での職場復帰となり、業務内容は事務関係のデスクワークへと変更、それに伴って職場も保育所から通勤しやすい場所へ変更となりました。
そこで、新たな職場内の環境を確認するために本人様・ケアマネージャーとともに職場に伺いました。
職場内では常時電動車椅子を使用できる環境ではなく、本人様が使用するデスクまでは歩いて移動しなければいけない環境でした。
チェックした点については、以下の通りとなります。
- 車椅子置き場からの動線は安全であるか
- 本人様が使用するデスクの位置は最適かどうか
- 使用機器(コピー機など)やトイレまでの動線は安全であるか
特に歩行距離だけではなく、人通りが多い場所・少ない場所の確認や自宅にはあまりない配線コードカバーによる段差の有無、方向転換の必要回数などを考慮して安全性を確保しました。
また、トイレ環境に関しては手すりの位置などはもちろんのこと、バリアフリートイレが使用中だったときを想定して、通常のトイレも確認しました。場合によっては、手すりがない状態での立ち座りやトイレ動作が求められるということです。
上記内容を共有した上で、職場復帰までにリハビリでは下記を強化項目としました。
段差跨ぎ練習
自宅での敷居やポールなどの物品を用意して、跨ぎ動作の安定性向上を図りました。
方向転換練習
90度・180度方向転換として、前後左右の重心移動を積極的に促しました。
支持物なしでの立ち座りや上肢リーチ練習
支持物なし、杖のみ使用、座面の高さなど条件を変化させながら実施しました。
どうしても生活上では非麻痺側上肢を中心に使用されることが多かったので、身体も同側に傾いてしまうことが多く、両脚で支持することもできていませんでした。
麻痺側上肢を積極的に参加させることで左右の非対称性を改善していきました。
杖のみの立ち上がり
支持なしでの立ち上がり
職場内で必要となる動作を獲得できた段階で、復職前の会議が開催されました。
職場スタッフ、人事部スタッフ、ケアマネージャー、理学療法士などといった関係職種が集まり、現在の状況や職場内で問題となりうる点などを情報共有しました。
そこからリハビリ勤務が開始となり、安全に職務を全うできると判断された段階で晴れて職場復帰を迎えることとなりました!
以上が職場復帰に至った事例紹介となります。
本人様のお身体・気持ち、周囲のご理解や連携(特に産業医、人事部や職場スタッフ、ケアマネージャー)など、リハビリ職種だけでは達成しなかった1例ではあります。
それでも本人様のお身体・気持ちを改善させ、目指すべき方向性の道標として寄り添いながら関わることの重要性を認識できた事例でした。
当施設でも復職を諦めかけている方へ向けて、できることを明確にしながら最大限の支援をできればという思いです。
ご相談も受け付けておりますので、ぜひ体験プログラムを有効活用していただければと思います。よろしくお願い致します。
理学療法士 長尾 侑治